処遇改善加算 実績報告書|「出して終わり」が返還を生む理由

「提出して終わり」にすると、困るのは来年の自分です

7月。本業の合間に、去年とは少し違う様式とにらめっこ。「これで合っているかな…」と不安なまま、提出ボタンを押す。

集計してみたら、「あれ、賃金改善が加算額に足りていない…?」。返還を避けるために、急いで一時金で駆け込み支給。本当はもっと計画的に職員へ還元したかったのに——。

毎年、同じことを繰り返していませんか。

実績報告書は、ただ提出すれば終わり、という書類ではありません。1年間の配分設計の「答え合わせ」です。そして、この答え合わせのやり方しだいで、来年の返還リスクも、会社が払う社会保険料も変わってきます。

この記事で分かること
  • 実績報告書で返還の引き金になりやすい3つのパターン
  • 不足が出たときの「埋め方」で会社の負担が変わる理由
  • 今年の報告が、来年の返還リスクにつながる構造
  • 自社対応に限界を感じたときの選択肢
しゃろ☆うし

「これ、自分のことだ…」ってドキッとした人、けっこう多いはず。大丈夫、ちゃんと順番に見ていけば怖くないよ。

実績報告書は「答え合わせ」|返還になる事業所の共通点

令和7年度分の実績報告書の提出期限は、原則として令和8年7月31日です(3月までサービス提供分を算定していた場合)。多くの事業所が「3月までの加算額と、職員に支払った賃金改善額を集計して、様式に転記して提出」という"事務作業"として処理しています。

ですが先ほど書いた通り、実績報告書は1年間の配分が正しかったかどうかの答え合わせです。そして、この答え合わせでつまずく事業所には、共通したパターンがあります。

返還の引き金になりやすい、3つのパターン

賃金改善額が、受け取った加算額を下回っていた

「受け取った額以上を賃金改善に充てる」ことが大前提です。集計してみたら足りていなかった——これが最も多いパターンです。

様式の取り違え・集計ミス

報告様式は年度ごとに変わります。前年度の様式を使い回して差し戻し、というのは珍しくありません。賃金台帳の集計期間の取り方を間違えるケースもあります。

月額賃金改善要件を満たしていない

加算で受け取った額は、すべてを賞与や一時金で配ってよいわけではありません。一定割合は、毎月の賃金(基本給または毎月支払う手当)の改善に充てる必要があります。賞与に寄せすぎていると、たとえ総額では加算額を上回っていても、この要件を満たさず返還につながることがあります。

このうち①と③は、実は表裏の関係にあります。不足が出たときにどう埋めるか、毎月いくらを月給に乗せるか——その設計しだいで、会社が背負う負担は大きく変わります。

不足が出たとき、「どう埋めるか」で会社の負担は変わる

賃金改善額が加算額を下回っていた場合、不足分を一時金や賞与として追加支給すれば、返還を回避できる取り扱いがあります。

ここで多くの事業所が見落とすのが、「埋め方」によって会社の社会保険料(法定福利費)の負担が変わるという点です。

同じ金額を職員に渡すのでも、賞与で一括精算するのか、もともと月々の手当の設計に織り込んでおいたのか——その違いだけで、会社が払う社会保険料も、職員の手取りも変わってきます。つまり、実績報告の段階で慌てて埋めるのと、年度のはじめに設計しておくのとでは、同じ加算額でも結果がまったく違うのです。

これは様式の書き方の問題ではなく、配分設計の問題です。そして、自社の賃金体系と社会保険の加入状況を踏まえないと、最適な答えは出せません。

今年の報告が、来年の返還を仕込んでいます

今年提出する令和7年度分の実績報告書は、令和7年度のルールで報告すれば問題ありません。

注意が必要なのは来年です。2026年6月の改定で加算額が増えた事業所、特に「令和8年度中に要件を整える」と誓約して上位区分(Ⅰロ・Ⅱロ)を取った事業所は、その取り組み(増えた加算額に見合う賃金改善や、生産性向上の取り組みなど)が、来年提出する令和8年度分の実績報告書で厳密に確認されます

増えた加算額に見合う賃金改善ができていなければ、来年の今ごろ、返還の話になります。そしてその布石は、今年度のうちに配分を設計しておかなければ間に合いません

実績報告書を「今年の分を出して終わり」にしてしまうと、この来年の地雷に気づかないまま1年が過ぎます。

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「これまで自社でやってきた」方へ

ここまで読んで、「制度が変わるたびに調べて、計算して、なんとか自分でやってきた」という方も多いと思います。これまではそれで回せていたのだと思います。

ただ、ここ数年で処遇改善加算は明らかに複雑になりました。区分は増え、要件は変わり、対象も広がる。毎年ルールが動くので、去年のやり方がそのまま通用するとは限りません。「これで合っているのか」と不安を抱えたまま、毎年なんとか乗り切る——それ自体が、もう相当な負担になっているのではないでしょうか。

しかも、配分や報告を一つ間違えれば、戻ってくるのは数十万円〜数百万円規模の返還です。自社で抱える限り、この判断も、毎年の調べ直しも、ぜんぶ社長一人の肩に乗り続けます。

外部に任せると、ここが変わります。

任せたほうが、手元に残ることもある

返還を防ぎ、社会保険料の負担まで含めて配分を設計すれば、顧問料を払っても結果的に会社に残るお金が増える、というケースは珍しくありません。「コスト」ではなく「投資」になります。

毎年の「調べ直し」がなくなる

制度がどう変わろうと、こちらで追いかけて先回りします。社長は本業に集中できます。

何より、楽になる

「これで合っているのか」と不安を抱える時間がなくなる。これが一番大きい、という声をよくいただきます。

おわりに

実績報告書は、毎年やってくる「答え合わせ」です。慌てて埋める書類にするか、淡々と通過するだけのものにするか——その差は、日々の配分をどう設計しているかで決まります。

一人で抱えて、毎年同じ不安を繰り返す必要はありません。来年の自分が困らないように、今から少しずつ整えていきましょう。

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投稿者プロフィール

谷山 雄大
谷山 雄大社会保険労務士
社会保険労務士Office ALMAは、神奈川県横須賀市を拠点とし、全国のお客様に対して、処遇改善加算サポートをはじめとする医療機関や中小企業の労務管理を専門としています。特に労務相談対応、処遇改善加算サポート、行動分析学を用いた人事評価制度構築・運用を得意とし、事業主をトータルでサポートします。課題解決に伴走するパートナーとして、実務的で現実的な提案を行います。
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