第6回 評価制度の仕組みと設計のポイント

はじめに
評価制度は、人事制度の中でも特に重要な役割を持つ仕組みです。
適切な評価制度が機能すると、社員のモチベーション向上や組織の成長につながりますが、評価基準が曖昧だったり、評価方法が不適切だと、「評価が形だけになっている」「納得感がない」といった不満につながることもあります。
今回は、評価制度の基本的な仕組みと、効果的に運用するための設計ポイントについて解説します。
評価制度の目的とは?

評価制度の目的は、単に社員をランク付けすることではなく、公正な評価を行い、社員の成長と組織の業績向上につなげることです。
主な目的は次の3つです。
目的 | 役割 |
---|---|
社員の成長を促進する | 目標を明確にし、スキルアップを支援する |
公正な評価を実現する | 社員の納得感を高め、組織の安定を図る |
賃金・昇格と連携する | 評価結果を給与や昇格に反映し、適正な処遇を実現する |
評価制度が適切に運用されることで、社員は**「どのような行動や成果が求められているのか」**を理解し、成長意欲を高めることができます。
評価制度の種類と特徴

評価制度には、以下のような種類があります。
評価制度の種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
成果評価 | 目標達成度に基づいて評価 | 明確な基準で評価しやすい | 短期的な結果に偏りやすい |
スキル評価 | 業務遂行能力を評価 | 社員の成長を促進できる | 評価基準が曖昧になりやすい |
姿勢評価 | 行動や態度を評価 | 組織風土の向上につながる | 主観的になりやすい |
どの評価制度を採用するかは、企業の目的や組織の特性によって異なりますが、
「成果」「スキル」「姿勢」の3つをバランスよく評価する仕組みが望ましいとされています。
評価制度の設計ステップ

① 目的の明確化
評価制度を設計する前に、「なぜ評価を行うのか?」を明確にすることが重要です。
目的例:
- 社員の成長を促進し、業績向上につなげる
- 評価結果を給与や昇格と連携し、公正な処遇を実現する
- 企業文化を醸成し、組織の一体感を高める
目的を明確にしないまま評価制度を導入すると、「形だけの評価」になり、社員の不満を招く原因になります。
② 評価項目を設定する
評価項目は、「何を評価するのか?」を明確にするために設定します。
評価項目 | 内容 | 主な反映先 |
---|---|---|
成果評価 | 目標達成度(売上・業績など) | 賞与 |
スキル評価 | 業務遂行能力・専門知識 | 給与・昇給 |
姿勢評価 | 行動・態度・価値観 | 給与・昇格 |
評価項目が曖昧だと、評価者ごとにバラつきが出てしまい、公正な評価ができなくなるため、「何を評価するのか?」を明確に定義することが重要です。
③ 評価基準を策定する
評価基準を明確にすることで、社員の納得感を高めることができます。
例えば、「成果評価」において、以下のような基準を設定すると、公平な評価がしやすくなります。
例:営業職の評価基準(成果評価)
評価ランク | 達成度 | 評価ポイント |
---|---|---|
S評価 | 目標の120%以上を達成 | 高評価・昇給・賞与UP |
A評価 | 目標の100〜119%を達成 | 標準評価・昇給あり |
B評価 | 目標の80〜99%を達成 | 基本評価・昇給なし |
C評価 | 目標の80%未満 | 評価低下・改善指導 |
評価基準を定めることで、「何をすれば評価が上がるのか」が明確になり、社員の成長を促進することができます。
④ フィードバック制度を導入する
評価は「つけるだけ」で終わらせてはいけません。
社員の成長を促すためには、評価結果をフィードバック面談で伝えることが重要です。
✅ 良い点・改善点を具体的に伝える
✅ 今後の成長目標を設定する
✅ 評価者と被評価者の認識をすり合わせる
フィードバックを適切に行うことで、社員は次に何をすべきかを理解し、モチベーションを高めることができます。
⑤ 賃金制度と連携させる
評価制度は、給与や昇格と連携させることで、より効果的に機能します。
評価結果 | 賃金制度との連携 |
---|---|
高評価 | 賞与増額・昇給・昇格の対象 |
標準評価 | 現状維持(昇給なし・減給なし) |
低評価 | 賞与減額・改善指導 |
評価と給与の関連性を明確にすることで、社員は「何をすれば昇給・昇格できるのか?」を理解し、成長意欲を高めることができます。
まとめ

- 評価制度の目的は「社員の成長促進」「公正な評価」「賃金・昇格との連携」
- 「成果」「スキル」「姿勢」の3つをバランスよく評価することが重要
- 評価項目と評価基準を明確にし、フィードバック制度を導入する
- 賃金制度と連携させることで、評価の納得感を高める
次回は「A4一枚評価制度とは?中小企業に最適な評価制度の仕組み」について解説します!
投稿者プロフィール

- 社会保険労務士
- 社会保険労務士Office ALMAは、神奈川県横須賀市を拠点とし、処遇改善加算サポートをはじめとする医療機関や中小企業の労務管理を専門としています。特に労務相談対応、処遇改善加算サポート、行動分析学を用いた人事評価制度構築・運用を得意とし、事業主をトータルでサポートします。課題解決に伴走するパートナーとして、実務的で現実的な提案を行います。
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