令和8年6月から新登場「処遇改善加算Ⅰロ・Ⅱロ」とは?上乗せ加算を取りに行く事業所が知っておくべきこと

「新しい加算区分ができた=すぐ取らなければ」と思っていませんか? 令和8年6月から新設される「Ⅰロ」「Ⅱロ」区分は確かに加算率が上がりますが、取得のために必要な取組や事務負担も増えます。

加算額の増加分と、それにかかるコスト・手間を天秤にかけたとき、すべての事業所にとってベストな選択とは限りません。この記事では、制度の内容を整理しながら、自事業所にとって本当に必要かどうかを考えるヒントをお伝えします。

この記事で分かること
  • 令和8年6月から新設される処遇改善加算「Ⅰロ・Ⅱロ」の仕組みと、従来の「イ」区分との加算率の違い
  • 「ロ」区分の取得に必要な要件と、自事業所にとって取得すべきかどうかを判断するためのポイント
しゃろ☆うし

それでは、詳しく解説していくね!

「イ」と「ロ」、何が違うのか

令和8年6月以降、処遇改善加算の区分に「イ」と「ロ」の2種類が生まれます。シンプルに言えば、

  • Ⅰイ・Ⅱイ:これまでと同じキャリアパス・職場環境等の要件を満たした事業所が算定できる区分
  • Ⅰロ・Ⅱロ:Ⅰイ・Ⅱイの要件に加えて、生産性向上や協働化への取組まで行っている事業所が算定できる、上乗せ区分

「ロ」を取るには、今の要件を満たした上でさらに別の取組が必要になります。
加算率は上がりますが、その分だけ事業所に求められることも増えます。


加算率の差を数字で見ると、無視できない

「ロ」を取れるかどうかで、実際にどれだけ変わるのか。全サービスで比較してみましょう。

▼ 訪問・通所系(令和8年6月以降)

サービスⅡイⅡロⅠイⅠロ
訪問介護24.9%26.6%27.0%28.7%
夜間対応型訪問介護24.6%25.7%26.7%27.8%
定期巡回・随時対応型訪問介護看護24.6%25.7%26.7%27.8%
(介護予防)訪問入浴介護11.6%12.7%12.2%13.3%
通所介護10.9%11.8%11.1%12.0%
地域密着型通所介護11.5%12.5%11.7%12.7%
(介護予防)通所リハビリテーション10.0%10.8%10.3%11.1%
(介護予防)認知症対応型通所介護20.9%22.9%21.6%23.6%

▼ 多機能・短期入所系(令和8年6月以降)

サービスⅡイⅡロⅠイⅠロ
(介護予防)小規模多機能型居宅介護16.8%18.3%17.1%18.6%
看護小規模多機能型居宅介護16.5%17.4%16.8%17.7%
(介護予防)短期入所生活介護15.9%17.2%16.3%17.6%
(介護予防)短期入所療養介護(老健)8.6%9.3%9.0%9.7%
(介護予防)短期入所療養介護(病院等)5.8%6.2%6.2%6.6%
(介護予防)短期入所療養介護(医療院)5.8%6.2%6.2%6.6%

▼ 施設・居住系(令和8年6月以降)

サービスⅡイⅡロⅠイⅠロ
(介護予防)特定施設入居者生活介護14.2%15.3%14.8%15.9%
地域密着型特定施設入居者生活介護14.2%15.3%14.8%15.9%
(介護予防)認知症対応型共同生活介護20.2%22.0%21.0%22.8%
介護老人福祉施設15.9%17.2%16.3%17.6%
地域密着型介護老人福祉施設15.9%17.2%16.3%17.6%
介護老人保健施設8.6%9.3%9.0%9.7%
介護医療院5.8%6.2%6.2%6.6%

「イ」から「ロ」への移行で加算率は0.7〜2.0%程度上がります。月の介護報酬総単位数が大きい事業所では、年間で数十万〜百万円規模の差になることもあります。

ただし、この数字だけを見て飛びつくのは少し待ってください。取得にかかる手間やコストと合わせて判断することが重要です。


「ロ」を取るために必要な「令和8年度特例要件」とは

Ⅰロ・Ⅱロを算定するには、以下のいずれかの取組が必要です。

① ケアプランデータ連携システムの利用(訪問・通所系サービス等が対象)

居宅介護支援事業所との間でケアプランデータをデジタル連携するシステムです。システムへの加入・運用には一定の導入コストと職員への習熟期間が伴います。「誓約」による申請時点からの要件充足は可能ですが、令和9年3月末までに実際に利用していることが求められます。

② 生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡの算定(施設・居住系・多機能系サービス等が対象)

業務改善の取組体制を継続的に維持することが前提となる加算です。算定のための体制整備や記録管理など、現場への負担も考慮が必要です。

③ 社会福祉連携推進法人への所属

法人が社会福祉連携推進法人に属している場合は要件を満たします。これは取組というよりも法人の組織形態に関わる話であり、すぐに対応できるものではありません。


「ロ」を取るべきか、現状維持でいいのか

加算率が上がることは確かですが、「ロ」の取得が全ての事業所にとって正解とは限りません。判断の参考として、以下を整理してみましょう。

取得を前向きに検討してもよいケース

  • すでにケアプランデータ連携システムや生産性向上推進体制加算の取組を進めている
  • 法人規模が大きく、事務処理の体制が整っている
  • 加算額の増加分が、導入・運用コストを明らかに上回る見込みがある

現状のⅠイ・Ⅱイのままでも十分なケース

  • 小規模事業所で、新たな取組に割けるリソースが限られている
  • ケアプランデータ連携システムの導入コストや運用負担が重い
  • 現時点では体制整備よりも現場ケアの安定を優先したい

「上位区分を取らなければ損」ではありません。無理に取得を目指して現場が疲弊したり、実態の伴わない誓約で後から対応に追われたりするほうが、長い目で見てリスクになる場合もあります。


まとめ:まず自事業所の状況を冷静に見極めることから

令和8年6月からの「Ⅰロ」「Ⅱロ」区分は、うまく活用できれば処遇改善の財源として有効な制度です。一方で、取得ありきで動くのではなく、自事業所の規模・体制・コストとのバランスを見た上で判断することが大切です。

制度の内容を正しく理解した上で、「取る」「取らない」どちらの判断をするにしても、それが自事業所にとって最善の選択であることが重要です。

※本記事は厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1474」(令和8年3月4日)に基づいて作成しています。 参考:介護保険最新情報掲載ページ|厚生労働省

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谷山 雄大
谷山 雄大社会保険労務士
社会保険労務士Office ALMAは、神奈川県横須賀市を拠点とし、全国のお客様に対して、処遇改善加算サポートをはじめとする医療機関や中小企業の労務管理を専門としています。特に労務相談対応、処遇改善加算サポート、行動分析学を用いた人事評価制度構築・運用を得意とし、事業主をトータルでサポートします。課題解決に伴走するパートナーとして、実務的で現実的な提案を行います。

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