介護より取りやすい?令和8年6月から新設の障がい福祉「処遇改善加算Ⅰロ・Ⅱロ」で加算率を上げる方法

「新しい加算区分ができた=すぐ取らなければ」と焦る必要はありません。ただ、障がい福祉分野での「Ⅰロ・Ⅱロ」は、介護分野と比べると要件の内容や取得のしやすさが異なります。

自事業所の状況によっては、積極的に取りに行く価値がある区分です。この記事では、制度の仕組みを整理しながら、取得すべきかどうかを判断するためのヒントをお伝えします。

この記事で分かること
  • 令和8年6月から新設される障がい福祉の「Ⅰロ・Ⅱロ」の仕組みと、サービス別の加算率の変化
  • 取得要件の内容と、介護分野との違い、および加算Ⅰ・Ⅱ算定中の事業所が特に注意すべき月給配分の変化
しゃろ☆うし

それでは、詳しく解説していくね!

「イ」と「ロ」、何が違うのか

令和8年6月以降、障がい福祉の処遇改善加算にも「イ」と「ロ」の2種類が生まれます。

  • Ⅰイ・Ⅱイ:これまでと同じキャリアパス・職場環境等の要件を満たした事業所が算定できる区分
  • Ⅰロ・Ⅱロ:Ⅰイ・Ⅱイの要件に加えて、生産性向上や協働化への取組まで行っている事業所が算定できる上乗せ区分

介護分野と同じ仕組みですが、取得要件の中身が異なります。障がい福祉分野のほうが要件の組み方によっては対応しやすいケースがあります。


加算率の差を数字で見ると

「ロ」を取れるかどうかで実際にどれだけ変わるのか。国の資料に基づいてサービス別に比較してみましょう。

▼ 訪問系・生活系サービス

サービスⅡイⅡロⅠイⅠロ
居宅介護43.1%44.1%44.6%45.6%
重度訪問介護35.7%36.7%37.2%38.2%
同行援護43.1%44.1%44.6%45.6%
行動援護39.6%40.6%41.1%42.1%
生活介護9.2%9.6%9.3%9.7%
療養介護16.2%16.9%16.4%17.1%

▼ 訓練・就労系サービス

サービスⅡイⅡロⅠイⅠロ
自立訓練(機能訓練)16.0%16.7%16.4%17.1%
自立訓練(生活訓練)16.0%16.7%16.4%17.1%
就労選択支援11.3%11.7%11.5%11.9%
就労移行支援11.3%11.7%11.5%11.9%
就労継続支援A型10.6%11.0%10.8%11.2%
就労継続支援B型10.3%10.7%10.5%10.9%
就労定着支援11.5%11.9%
自立生活援助11.3%11.7%11.5%11.9%

▼ 居住系・共同生活系サービス

サービスⅡイⅡロⅠイⅠロ
共同生活援助(介護サービス包括型)16.0%16.6%16.3%16.9%
共同生活援助(日中サービス支援型)16.0%16.6%16.3%16.9%
共同生活援助(外部サービス利用型)22.4%23.0%22.7%23.3%
施設入所支援18.6%19.3%
短期入所18.6%19.3%
重度障害者等包括支援25.2%26.2%

▼ 障がい児支援サービス

サービスⅡイⅡロⅠイⅠロ
児童発達支援14.9%15.5%15.2%15.8%
医療型児童発達支援19.4%20.0%19.7%20.3%
放課後等デイサービス15.2%15.8%15.5%16.1%
居宅訪問型児童発達支援15.0%15.6%
保育所等訪問支援15.0%15.6%
福祉型障害児入所施設30.1%31.6%30.5%32.0%
医療型障害児入所施設28.1%29.6%28.5%30.0%

※「—」はⅢ・Ⅳのみ、またはⅠイ・Ⅰロのみ設定されているサービスです。

特に居宅介護・同行援護・行動援護などの訪問系サービスは加算率自体が高く、「イ」→「ロ」の差が大きなインパクトになります。月の報酬総単位数が大きい事業所ほど、年間を通じると差額は数十万円規模になってきます。


「ロ」を取るために何が必要か

Ⅰロ・Ⅱロを算定するには、以下のア(またはイ)とウを両方満たす必要があります。

ア)生産性向上に関する取組を5項目以上実施(⑱と㉑は必須)

番号内容
⑱【必須】現場の課題の見える化(課題の抽出・構造化・業務時間調査等)
5S活動等の実践による職場環境の整備
業務手順書の作成や記録・報告様式の工夫等による情報共有・作業負担の軽減
㉑【必須】業務支援ソフト・情報端末(タブレット・スマートフォン等)の導入
介護ロボット・インカム等のICT機器の導入
役割分担の明確化・間接業務(食事準備・清掃等)の見直しやシフト組み換え等
各種委員会の共同設置・物品の共同購入・ICTインフラの共同整備等

イ)社会福祉連携推進法人に所属していること

「ア」の代替要件です。所属している場合は取組項目数に関係なく要件を満たせます。
ただ、現実的な要件ではないものにはなります。

ウ)加算Ⅱロ相当の加算額の2分の1以上を月給(基本給または毎月支払われる手当)で配分

この「ウ」については後述しますが、現在加算ⅠやⅡを算定中の事業所が特に注意すべきポイントです。

なお、アとウの要件は令和8年度中の対応の誓約で申請時点から要件充足とみなされます(社会福祉連携推進法人への所属を除く)。ただし実績報告書での確認後に未対応が判明した場合は、加算額の一部または全部の返還を求められます。誓約する際は、必ず実行できる取組を選ぶことが重要です。


介護分野との要件の違いがポイント

介護分野の「Ⅰロ・Ⅱロ」ではケアプランデータ連携システムへの加入や生産性向上推進体制加算の算定が主な要件でした。障がい福祉分野の要件は⑱〜㉔の取組を組み合わせる設計になっており、事業所の実態に合わせた選択がしやすい構造です。

特に注目したいのは次の点です。

  • すでに業務支援ソフト(記録・請求ソフト)を使っている事業所は、㉑をすでに満たしている可能性が高い
  • ⑱と㉑さえ満たせば、残り3項目は⑲・⑳・㉒・㉓・㉔の中から現場の実態に合わせて選べる
  • 社会福祉連携推進法人に所属している場合は、取組項目数に関係なく要件を満たせる

【要注意】「ウ」の要件を深掘り:加算Ⅰ・Ⅱ算定中の事業所こそ確認を

今回の特例要件の中で、最も見落とされやすく、かつ実務上インパクトが大きいのが「ウ」の要件です。

「今と同じように月給で配分すればいいだけでは?」と思いがちですが、そうではありません。現在の月給配分の基準と、令和8年6月以降の基準は異なります。

現行と令和8年6月以降の比較

現行(〜令和8年5月)令和8年6月以降(Ⅱロ取得時)
月給配分の基準加算Ⅳ相当の加算額の1/2以上加算Ⅱロ相当の加算額の1/2以上

現在、加算ⅠやⅡを算定している事業所も含め、月給配分の基準はあくまで「加算Ⅳ相当の1/2」です。ところが「ロ」を取得すると、この基準が「加算Ⅱロ相当の1/2」へと引き上がります。

「Ⅱロ相当の1/2」とはどういう意味か

注意が必要なのは、「イとロの差額の1/2」ではなく、「Ⅱロの加算額全体の1/2」という解釈が正しいとされている点です。

放課後等デイサービスを例に試算してみましょう。

  • 加算Ⅱロの加算率:15.8%
  • 月の報酬総単位数が100万円の事業所の場合、加算Ⅱロの加算額は約15.8万円
  • その1/2である約7.9万円以上を月給で配分しなければならない

一方、現行の月給配分基準(加算Ⅳ相当の1/2)で試算すると、放デイの加算Ⅳ相当の加算率は約11.9%なので、同じ100万円の事業所では現行基準は約5.95万円です。

「ロ」を取得することで、月給配分の義務額が約2万円近く増える計算になります。

なぜ現在の加算Ⅰ・Ⅱ算定事業所が要注意なのか

国の資料では、上位加算区分になるほど加算額に占める月給に配分すべき額の割合が下がる傾向にあることが背景として指摘されています。加算が上がるにつれて配分割合が下がりがちになるという実態への是正が、今回の「ウ」の要件に込められています。

つまり、現在加算ⅠやⅡを算定しながらも、処遇改善の配分を賞与・一時金中心で行ってきた事業所は特に注意が必要です。「ロ」を取りに行く=月給ベースの配分義務が増えるということを先に試算しておかないと、年度末に「誓約したのに配分が足りなかった」という返還リスクにつながりかねません。

「ロ」取得前に確認すべき3つのポイント

  • 現在の賃金構造で、月給(基本給・固定手当)と賞与・一時金の比率はどうなっているか
  • 加算Ⅱロを算定した場合の加算額見込みを試算し、その1/2が月給で配分できるか
  • 配分が不足する場合、賃金規程の改定(基本給・固定手当への付け替え)が必要になるか

「加算率が上がる=収入が増える」という単純な話ではなく、月次の固定的な人件費が増えるという経営上の変化でもあります。収入増と費用増のバランスをしっかり試算した上で判断することが、「ロ」取得の大前提です。


「ロ」を取りに行くべきか、現状維持か

障がい福祉の「Ⅰロ・Ⅱロ」については、介護分野よりも積極的に検討する価値があります。ただし事業所の状況によって判断は変わります。

取得を前向きに検討してもよいケース

  • すでに記録・請求ソフト(㉑)を導入している
  • 現場で課題整理や業務改善の取組(⑱)がすでに進んでいる
  • 法人として社会福祉連携推進法人に所属している
  • 訪問系サービスなど加算率が高く、上乗せ効果が大きい
  • 現在の賃金構造が月給中心で、配分義務の増加に対応しやすい

現状維持でも十分なケース

  • 業務支援ソフトをまだ導入しておらず、導入コストが重い
  • 小規模事業所で、取組の実施・維持に割けるリソースが乏しい
  • 処遇改善の配分を賞与・一時金中心で行っており、月給配分への切り替えが難しい
  • 誓約はできても、年度末までに確実に対応できるか見通せない

特に、すでに㉑(業務支援ソフト)を導入済みで、月給中心の賃金構造が整っている事業所は、比較的スムーズに取得を目指せる環境にあります。⑲(5S活動)・⑳(業務手順書の整備)・㉓(役割分担の見直し)などは大きな追加コストなしに対応できるケースが多く、まずは取組の棚卸しをしてみることをおすすめします。


今すぐやること:取組の棚卸しチェック

  • 記録・請求ソフトを導入済みか?(㉑の確認)
  • 現場で業務改善の取組や課題の見える化をしているか?(⑱の確認)
  • 上記2項目がOKなら、残り3項目として選べる取組はどれか?(⑲⑳㉒㉓㉔から選択)
  • 加算Ⅱロを算定した場合の加算額を試算し、その1/2が月給で配分できるか?
  • 誓約を使う場合、令和9年3月末までに確実に実施できるか?

まとめ:まず「今の状況」を2つの軸で確認してみよう

障がい福祉の「Ⅰロ・Ⅱロ」は、介護分野に比べて要件の柔軟性が高く、すでに一定の取組が進んでいる事業所にとっては現実的な選択肢です。ただし取得を判断する際は、①取組要件を満たせるか②月給配分の義務増に対応できるか、この2つの軸を必ずセットで確認することが重要です。

どちらか一方だけ見て判断すると、取得後に想定外の対応が生じるリスクがあります。この記事を参考に、自事業所の実態に合った冷静な判断をしていただければ幸いです。


※本記事は厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(令和8年2月18日・障害福祉サービス等報酬改定検討チーム第53回資料)に基づいて作成しています。正式な通知・告示の内容と異なる場合がありますので、最新情報は厚生労働省の公式ページをご確認ください。 参考:令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の概要|厚生労働省

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投稿者プロフィール

谷山 雄大
谷山 雄大社会保険労務士
社会保険労務士Office ALMAは、神奈川県横須賀市を拠点とし、全国のお客様に対して、処遇改善加算サポートをはじめとする医療機関や中小企業の労務管理を専門としています。特に労務相談対応、処遇改善加算サポート、行動分析学を用いた人事評価制度構築・運用を得意とし、事業主をトータルでサポートします。課題解決に伴走するパートナーとして、実務的で現実的な提案を行います。

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