【2026年6月改定】訪問看護も処遇改善加算の対象に|看護師の賃上げ原資と算定要件をわかりやすく解説

「看護師の給料を上げたい。でも、これ以上人件費は増やせない…」
そんな悩みを抱えている訪問看護ステーションの経営者の方は、決して少なくありません。
人材不足が続く中で、給与水準は採用や定着を左右する最大の要因です。しかし、診療報酬・介護報酬の枠内で賃上げを続けることには、どうしても限界があります。
その状況を大きく変える制度改正が、2026年6月に実施される介護報酬の臨時改定です。
この改定により、これまで対象外だった訪問看護・介護予防訪問看護が「処遇改善加算」の対象に加わる見込みとなりました。
これはつまり、訪問看護ステーションが「国の財源を使って職員の賃上げを行える仕組み」に入るということを意味します。
- いつから訪問看護で処遇改善加算が算定できるのか
- どんな要件を満たせばよいのか
- 経営にどんな影響があるのか

それでは、実務家目線で詳しく解説していくね!
訪問看護でも「処遇改善加算」が算定可能に!

2026年6月から対象拡大へ
2026年6月に予定されている 介護報酬の臨時改定(期中改定) において、「介護職員等処遇改善加算(以下:処遇改善加算)」の 対象サービスに「訪問看護」および「介護予防訪問看護」 が新たに加わる方向で議論が進んでいます。これにより、訪問看護ステーションでも スタッフの賃金改善につながる加算が算定できるようになります。
そもそも「処遇改善加算」とは?

処遇改善加算とは、国が介護・福祉の現場で働く職員の給料を上げるために用意している「賃上げ専用の加算」です。
通常の介護報酬は、事業所の売上として自由に使えますが、処遇改善加算は
「職員の給与・賞与・手当に使うこと」が条件になっており、他の経費には使えません。
つまり、この加算を算定すれば、国の財源を使って職員の処遇を改善できる仕組みです。
これまで処遇改善加算の対象は、主に介護職員が中心で、訪問看護は原則として対象外でした。
そのため、訪問看護ステーションでは、看護師の賃上げを事業所の収益だけで賄う必要がありました。
しかし、2026年6月の介護報酬改定により、訪問看護・介護予防訪問看護も処遇改善加算の対象に加わる見込みとなっています。
これにより、訪問看護ステーションも、国の制度を活用して看護師の給与改善を行えるようになるのです。
なぜ訪問看護が対象になるの?背景と目的

これまで処遇改善加算は「介護職員」を中心としていましたが、介護・福祉分野全体で 人材確保・賃金改善の必要性が高まっているため、幅広い介護従事者への処遇改善の対象拡大が必要とされています。
その一環として、近年人手不足が深刻な 訪問看護・予防訪問看護の職員にも処遇改善加算を適用 する案が社会保障審議会で大筋了承されました。
訪問看護のスタッフには看護師・准看護師が多く、介護職と比べても給与格差が問題視されています。この改定により 訪問看護スタッフの処遇改善が期待 されています。
適用される時期

2026年6月1日施行予定
2026年度の 臨時(期中)介護報酬改定 として実施されます。
この改定は、通常の3年ごとの大規模改定とは別の「途中改定」で、処遇改善加算の拡充を早期に進めるために行われる予定です。
訪問看護が処遇改善加算で算定できる条件(要件)

訪問看護を対象とする処遇改善加算は、従来の加算Ⅳを算定する必要が想定されています。2025年12月時点の審議の内容をまとめると以下の案が出ています。
加算要件の考え方
訪問看護・予防訪問看護が処遇改善加算を算定するためには、次の 要件を満たすことが検討されています。
「介護職員等処遇改善加算(Ⅳ)」の要件に準ずる
→ 職員の賃金改善、キャリアパス制度の整備、職場環境等改善の取組みなど、現行の介護職員等処遇改善加算Ⅳで求められる要件を満たすこと。
・ 代表的な要件例
- キャリアパス要件Ⅰ(役割・賃金体系の明確化)
- キャリアパス要件Ⅱ(スキルアップ支援の実施)
- 職場環境等要件(働きやすい職場づくりへの取組み)
ただし、上記については経過措置(一定期間の猶予)が設けられる予定です。
処遇改善加算で「どのくらいのお金」が入ってくるのか

処遇改善加算は、「職員1人あたりいくら」と決まる制度ではありません。
事業所の介護報酬(売上)に一定の加算率を掛けて計算される仕組みになっています。
計算式はとてもシンプルです。
処遇改善加算額 =
介護報酬(基本報酬+各種加算) × 加算率
この「加算率」は、取得する区分によって異なります。
従来の介護事業所(例として訪問介護)では、概ね次のような水準になっています。
| 区分 | 加算率 |
|---|---|
| 処遇改善加算Ⅰ | 24.5% |
| 処遇改善加算Ⅱ | 22.4% |
| 処遇改善加算Ⅲ | 18.2% |
| 処遇改善加算Ⅳ | 14.5% |
たとえば、月の介護報酬が 1,000万円 の事業所が、加算Ⅱ(22.4%)を算定している場合、
1,000万円 × 22.4% = 224万円
毎月 224万円が「職員の賃上げ専用のお金」 として上乗せで入ってきます。
年間では約2,700万円になり、この金額を基本給の引き上げ、毎月の手当、賞与などとして職員に分配します。
職員が20人いれば、単純計算で
224万円 ÷ 20人 = 1人あたり月11.2万円分の原資
が生まれる計算になります。
訪問看護についての加算率はまだ発表されていませんが、同時期にある補助金の加算率が13.2%であることから、近い数字になるものと予想します。
訪問看護事業者が準備すべきこと(ポイント)

今回の対象拡大に備えて、訪問看護事業者が取り組むべき主な準備は次の通りです:
① 職員の処遇改善計画の策定(賃金体系の検討)
賃金改善の根拠を明確にすることが必要です。
② キャリアパス制度の整備・周知
職員のスキルアップや評価が見える化できる体制を整えましょう。
③ 職場環境改善の取組み
働きやすい職場づくり(勤務環境・研修体制など)を整備することが重要です。
まとめ(訪問看護×処遇改善加算)

2026年6月の介護報酬改定により、訪問看護が処遇改善加算の対象に加わる見込みとなりました。
これは、訪問看護ステーションが 国の制度を使って看護師やスタッフの給与を引き上げられる仕組みに入る ことを意味します。
処遇改善加算は、介護報酬に一定の割合が上乗せされ、そのお金を 職員の給与・賞与・手当として使うことが義務付けられた「賃上げ専用の財源」 です。
売上規模によっては、年間で数百万円規模の原資が新たに確保できる可能性もあり、訪問看護の経営に与える影響は非常に大きいと言えます。
一方で、加算を算定するためには、キャリアパス制度の整備や職場環境改善などの要件を満たす必要があり、準備なしに自動的にお金が入ってくるわけではありません。
しかし、この改定は「人が集まり、辞めにくい訪問看護ステーション」をつくるための、国からの明確なメッセージでもあります。
2026年6月はまだ先のように見えて、制度対応の準備には時間がかかります。
この制度をチャンスに変えられるかどうかは、今のうちから情報を整理し、体制づくりを始められるかどうかで大きく差がついていくでしょう。
専門家からのひとこと

当事務所は、介護・医療・訪問看護・障がい福祉サービス分野を中心に、処遇改善加算や賃金制度、職員の処遇設計を日常的に扱っている社会保険労務士事務所です。
今回の2026年6月改定についても、国の審議会資料や通知案をもとに、実務にどう影響するかを継続的に分析しています。
処遇改善加算は、「制度を知っているかどうか」だけでなく、
どのように設計し、どう配分し、どう管理するかで、職員の満足度も経営の安定性も大きく変わります。
今後、厚生労働省から詳細な算定要件や届出様式などが公表され次第、
訪問看護ステーションが実際にどう対応すればよいのかを、さらに分かりやすく解説した記事を順次公開していく予定です。
最新情報を逃さないためにも、ぜひ定期的に当サイトをご覧ください。
現場と経営の両方を理解した専門家として、引き続き実務に役立つ情報をお届けしていきます。
ご案内

介護職員等処遇改善加算の適切な運用についてもお困りではありませんか?
「処遇改善加算を適切に活用して、職員の定着率を上げたい!」
「加算の要件や計画書の作成方法が分からない…」
「処遇改善加算を活用して事業所の環境を整えたい!」
そんな事業所様のために、処遇改善加算の全面サポートをいたします!
- 加算の適用要件の確認
- 申請に必要な計画書の作成支援
- 最適な活用方法のご提案
- 月次の加算金の管理
複雑な制度をしっかり理解し、活用できるものは最大限に活かして、職場環境を改善し、経営を盛り上げていきましょう!
まずはお気軽にご相談ください!
※訪問看護ステーションについても同様のサービス提供を予定しております。
まだ具体的数字(算定率や要件)などが国から提示されていませんが、参考程度に下記サポート内容や料金をご覧いただければと思います。
投稿者プロフィール

- 社会保険労務士
- 社会保険労務士Office ALMAは、神奈川県横須賀市を拠点とし、全国のお客様に対して、処遇改善加算サポートをはじめとする医療機関や中小企業の労務管理を専門としています。特に労務相談対応、処遇改善加算サポート、行動分析学を用いた人事評価制度構築・運用を得意とし、事業主をトータルでサポートします。課題解決に伴走するパートナーとして、実務的で現実的な提案を行います。
最新の投稿
お問い合わせ
ご依頼及び業務内容へのご質問などお気軽にお問い合わせください。
(全国オンラインにてご対応しております。)
※営業等のご連絡につきましては、別途対応料金をご請求いたします。





