2025年度 介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件 - 実践に向けた具体策

職場環境等要件のおさらい

まずは2024年度までの経過措置期間中と、2025年度以降の条件を整理しましょう。

(2024年度まで)経過措置期間中

  • 新加算Ⅲ、Ⅳ:全体で一つ以上取り組んでいる。
  • 新加算Ⅰ、Ⅱ:各区分ごとにそれぞれ一つ以上取り組んでいる。

2025年度以降

  • 新加算Ⅲ、Ⅳ:各区分ごとにそれぞれ一つ以上(生産性向上は二つ以上)取り組んでいる。
  • 新加算Ⅰ、Ⅱ:各区分ごとにそれぞれ二つ以上(生産性向上は三つ以上うち資料⑰、または⑱は必須)取り組んでいる。

令和6年度(2024年度)は経過措置があり、処遇改善加算Ⅲ、Ⅳでは「全体で1つ以上」の取り組みで要件を満たすことができます。しかし、令和7年度(2025年度)からは、処遇改善加算Ⅲ、Ⅳでも「各項目ごとに1~2以上の取り組みが必要」となり、要件が厳しくなります。

特に、生産性向上がキーとなり、厚生労働省の「生産性向上ガイドライン」に沿った取り組みが求められます。また、新処遇改善加算Ⅰ、Ⅱを取得する場合には、HPや情報公開システムなどを活用し、法人内外への周知が必要となります。この項目では「職場環境等要件のイメージを公表する必要がある」ことを理解しなければなりません。

職場環境等要件の各項目

介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件について、「何を、どう取り組めばいいかわからない」という声を多く聞きます。この記事では、処遇改善加算における「職場環境等要件」の6つの取り組み区分(入職促進、キャリア支援、多様な働き方、健康管理、生産性向上、労働環境改善)について、現場で実行できる具体策を紹介します。


入職促進と人材確保 – 具体的な取り組み例

① 理念発信

朝礼や研修時に理念や方針を伝え、職員全体に浸透させる。

② 事業所間の共同採用や研修制度の整備

他事業所と連携し「実務者研修」の受講支援や人材交流を実施する。

③ 幅広い人材の採用

未経験者・中高年・主婦層向けに、自身の今後を明確にするキャリアパスを設定する。

④ 職業体験や地域交流の実施

地域のイベントなどに参加し、職業の魅力をPRする。

キャリアアップ支援 – 職員育成を実践する方法

⑤ 資格取得応援

受講費用補助や勤務時間内の研修受講などを支援する。

⑥ キャリア段位制度と人事考課の連動

スキル評価制度と給与・昇給などを連動させる。

⑦ エルダー・メンター制度の導入

新人にプリセプター(マンツーマンの指導担当者)を付けてサポートする。

⑧ 定期的なキャリア面談の実施

上司などと定期的な面談の機会を設け、キャリアアップに向けた相談を実施する。

両立支援と多様な働き方 – 実現するための施策

⑨ 育児・介護と両立しやすい制度整備

子の看護等休暇や介護休暇などの取得促進と、制度についての概要説明をすることで、取得しやすい環境を作る。

⑩ 短時間制社員制度や正規転換制度の導入

時短勤務制度の導入や、正社員転換制度の創設など、多様な働き方を支援する仕組みを作る。

⑪ 有給休暇の取得促進

年間の取得目標の設定や(具体的に数字で)、管理職などからの積極的な声掛けなど、形だけでなく数字でハッキリと見せる。

⑫ 業務の属人化を防ぎ、休みやすい職場へ

業務マニュアルの作成、誰でもフォローできる体制づくりを行う。

心身の健康管理 – 職員が安心して働ける環境づくり

⑬ 相談窓口の設置

社労士などの外部専門家による相談窓口を開設する。

⑭ 短時間勤務者にも健康診断・ストレスチェックを実施

非常勤職員も健康診断を受けられる体制を整備する。

⑮ 腰痛予防のための技術研修

理学療法士などの外部講師を招き、腰痛対策の研修を実施する。

⑯ 事故・トラブル対応マニュアルの整備

介護リフトの導入と腰痛予防研修を組み合わせて行う。

生産性向上 – 2025年度以降の必須取り組み

この項目に関しては、新加算Ⅰ、Ⅱを算定する場合、各区分ごとにそれぞれ二つ以上(生産性向上は三つ以上うち資料⑰、または⑱は必須)取り組んでいることが必要になります。

イマイチ⑰、⑱がぼんやりしているのですが、解釈の仕方によっては問題なく三つ以上はクリアできると思います。

⑰ 生産性向上ガイドラインに基づき、業務改善活動の体制構築
⑱ 現場の課題の見える化を実施している

生産性向上の流れは、以下のステップで進めます。

  1. 準備 - 課題を把握するための体制を整備
  2. 課題の見える化 - 現場の問題点を明確にする
  3. 実行計画の策定 - 解決策を立案し、目標を設定
  4. 改善活動の実施 - 最新機器の活用や業務見直しを行う
  5. 振り返り - 効果を検証し、改善点を洗い出す
  6. 計画の見直し - 課題を再分析し、次のアクションへ

この流れに沿って、職員のヒアリングや最新技術を活用しながら業務改善を進めます。詳細は「厚生労働省 生産性向上ガイドライン」に掲載されています。

資料についてはこちらから

⑲ 5S活動等による職場環境の整備

整理・整頓・清掃・清潔・躾を徹底し、働きやすい職場づくりを行う。

⑳ 業務手順書や報告様式の工夫による作業負担などの軽減

マニュアルの作成により業務負担を軽減する。

㉑ 介護ソフト、情報端末の導入
㉒ 介護ロボット又はインカム等のICT機器
㉓ 介護職員がケアに専念できるよう、間接業務は介護助手や外注で分担
㉔ 事務処理やICT環境を共同整備し、協働化で職場環境を改善

労働環境改善 – 職員の満足度を高める施策

㉕ 職場内コミュニケーションの活性化

ミーティングを通じて職員の気づきを反映し、勤務環境やケアを改善する。

㉖ 地域との交流促進

児童や住民と関わり、地域包括ケアの意識向上を目指す。

㉗ ケア理念の学習機会の提供

介護保険や法人理念を学ぶ研修を定期的に開催する。

㉘ 好事例や感謝の共有

利用者や家族の感謝を共有し、職員のモチベーションを高める。


2025年度以降は生産性向上が加算取得の必須条件です。

ICT導入や現場の声を取り入れた業務改善が鍵となります。これらの実例を参考に、事業所の特色を生かした取り組みを進めてください。

投稿者プロフィール

谷山 雄大
谷山 雄大社会保険労務士
社会保険労務士Office ALMAは、神奈川県横須賀市を拠点とし、処遇改善加算サポートをはじめとする医療機関や中小企業の労務管理を専門としています。特に労務相談対応、処遇改善加算サポート、行動分析学を用いた人事評価制度構築・運用を得意とし、事業主をトータルでサポートします。課題解決に伴走するパートナーとして、実務的で現実的な提案を行います。

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