第2回 人事制度が形骸化する理由とその対策 

【全10回】人事制度構築・運用シリーズ

第2回目となります。

はじめに

「せっかく人事制度を導入したのに、なぜかうまく機能しない…」「形だけの評価制度になってしまっている…」
そんな悩みを抱える企業は少なくありません。

人事制度は、適切に運用しなければ意味がなくなり、単なる「ルール」や「手続き」になってしまうことがあります。
今回は、人事制度が形骸化する主な理由と、それを防ぐための対策について解説します。

人事制度が形骸化する3つの理由

① 目的を見失っている

人事制度は、あくまで企業の成長や社員の育成のためのツールです。しかし、導入後にその目的が曖昧になり、次第に「評価をつけること」が目的になってしまうケースが多く見られます。

例:目的を見失った企業の実例

  • 形式的に評価シートを埋めるだけで、評価のフィードバックがない
  • 目標設定が「前年踏襲」になり、社員の成長につながっていない

対策:「目的を可視化し、定期的に見直す」

  • 企業の成長・人材育成の目的を明文化し、社内で共有する
  • 評価時に「何のためにこの制度を運用しているのか」を振り返る機会を作る

② 運用者・評価者が慣れていない

人事制度は導入しただけでは機能しません。運用する管理職や評価者が「評価の仕方」や「運用ルール」を十分に理解していないと、形骸化が進みます。

例:運用者が慣れていないケース

  • 「評価シートをいつ書くべきか」「どのようにフィードバックすべきか」がわからず、期限ギリギリに適当に作成する
  • 目標設定やフィードバック面談のスキルが不足し、実質的に評価が機能していない

対策:「評価者のスキルアップと継続的なトレーニング」

  • 評価者研修を実施し、適切な評価方法・フィードバックの仕方を学ぶ
  • 「目標設定の仕方」「部下との対話方法」など、実践型のトレーニングを行う

③ 力の入れどころを間違えている

人事制度は、「評価のタイミング」だけが重要ではなく、期中のマネジメント(中間確認・フィードバック)がカギとなります。

しかし、多くの企業では「評価シートの締切間際に慌てて記入するだけ」になってしまい、本来の運用が機能していません。

例:運用がうまくいかないパターン

  • 期初(目標設定):上司と部下がほぼ話し合わずに設定する
  • 期中(マネジメント):何もチェックせず、フォローアップもなし
  • 期末(評価):上司も部下も忘れていて、締切間際に適当に記入して終わり

対策:「期中のフォローを強化し、仕組み化する」

  • 「30:50:20」の割合でエネルギーを使う
    • 30% → 期初の目標設定(適切なゴール設定)
    • 50% → 期中のマネジメント(中間レビュー・指導・調整)
    • 20% → 期末の評価(フィードバック)
  • 「サポートシート」を活用し、月1回のフォローアップ面談を実施
  • 「評価者会議」や「フィードバック研修」を定期的に開催し、評価スキルを向上

この仕組みを作れるかどうかが分かれ道!

形骸化を防ぐためのポイント

人事制度を形骸化させないためには、次の3つのポイントを意識することが重要です。

ポイント具体的な対策
目的を明確にする「何のための制度なのか」を社員に定期的に伝え、評価を単なる作業にしない
運用者のスキルを向上させる評価者研修や目標設定のトレーニングを実施し、適切なフィードバックができる環境を作る
期中のマネジメントを強化する目標設定後にフォローアップ面談を行い、評価の納得度を高める

まとめ

  • 人事制度が形骸化する主な理由は「目的を見失う」「運用者が慣れていない」「力の入れどころを間違える」こと
  • 形骸化を防ぐためには、期中のマネジメントを強化し、評価者のスキルアップを行うことが重要
  • 次回は、**「人事制度の3本柱!等級制度・賃金制度・評価制度の役割」**について解説します!

投稿者プロフィール

谷山 雄大
谷山 雄大社会保険労務士
社会保険労務士Office ALMAは、神奈川県横須賀市を拠点とし、処遇改善加算サポートをはじめとする医療機関や中小企業の労務管理を専門としています。特に労務相談対応、処遇改善加算サポート、行動分析学を用いた人事評価制度構築・運用を得意とし、事業主をトータルでサポートします。課題解決に伴走するパートナーとして、実務的で現実的な提案を行います。

お問い合わせ

ご依頼及び業務内容へのご質問などお気軽にお問い合わせください。
(全国オンラインにてご対応しております。)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です